個人でiOSアプリを開発して初めて有料で出すとき、価格をいくらにするかは迷いますよね。アノアプリに登録されている有料アプリ23,548本の価格分布に、評価件数・対応言語・対応デバイス・値下げのデータを重ねて、価格を決めるときに何を見ればよいかを整理しました。
有料アプリの6割強は150円・300円・500円・800円のどれか
追跡している有料アプリ23,548本の価格は、中央値が500円、下位25%が150円(150円未満の50円や100円のアプリが917本、150円以下の累計5,893本)、上位25%が800円です。価格の種類は157通りありますが、150円(21.1%)・300円(17.2%)・500円(14.8%)・800円(10.2%)の4つで63.3%を占めています。
App Storeの価格はAppleの価格表から選ぶ仕組みなので、この集中には価格表の刻みも反映されています。ただ、価格表には200円や250円のような刻みもあり(追跡中の有料アプリでは200円が199本、250円が21本)、選べるのに選ばれていない価格があることから、この4つへの集中はデベロッパーの選択の結果です。
下記表でゲームの下位25%が160円になっているのは、ゲームの150円以下が648本で全体2,630本の4分の1(658本目)にわずかに届かず、160円の14本にかかるためです。残りの3分の1強は他の価格ですが、初めての有料アプリならまずこの4つのどれかから選び、あとから値下げで調整するのが無難ではないかと筆者は考えています。
| ジャンル | 有料本数 | 下位25% | 中央値 | 上位25% |
|---|---|---|---|---|
| ミュージック | 2,531 | 500円 | 800円 | 1,500円 |
| メディカル | 452 | 300円 | 600円 | 1,500円 |
| 教育 | 3,280 | 300円 | 500円 | 800円 |
| ゲーム | 2,630 | 160円 | 500円 | 800円 |
| 仕事効率化 | 1,547 | 150円 | 500円 | 800円 |
| 写真/ビデオ | 1,458 | 150円 | 400円 | 600円 |
| ユーティリティ | 3,297 | 150円 | 300円 | 600円 |
| ヘルスケア/フィットネス | 913 | 150円 | 300円 | 600円 |
ミュージックの中央値800円とユーティリティの300円では倍以上の差があります。ミュージックは価格帯そのものが高く、ユーティリティやヘルスケアは中央の半分が150円から600円のあいだに収まっています。
メディカルは本数こそ452本と少ないものの中央値600円で、上位25%が1,500円と高価格帯の割合が大きいジャンルです。専門性や信頼性が求められるジャンルでもあり、個人が参入しにくい影響もありそうです。
同じジャンルの他のアプリと並べて見られる場面が多いので、自分のアプリが属するジャンルの中央値を起点にするのが無難だと思います。値下げで露出を作る予定があるなら、下げ幅を残すために上位25%までの範囲で高めに置く選択もあります。ジャンル別の詳しい分布はApp Storeの有料アプリはいくらが多いのかを参考にしてください。
例えば、写真加工のアプリを写真/ビデオとして出すなら、中央値は400円、上位25%は600円です。4つの価格のうちこの範囲に入るのは500円なので、出発点は500円になります。
後述のとおり有料のままの値下げ幅の中央値は50%で、500円の半額は250円です。ただ、追跡した値下げのうち500円から有料のまま下げた463件の値下げ後の価格は、300円が52.5%、150円が35.2%で、250円はほぼ選ばれていません。
実際には300円(40%引き)か150円(70%引き)に落とすことになります。150円で出すと有料のまま下げる余地は小さく、下げるなら無料化が選択肢になります。
評価は付かない、を前提にする
有料アプリの評価件数は中央値が0件です。半数以上の有料アプリには評価が1件も付いておらず、100件未満が95.1%を占めます。無料アプリの中央値は61件です。追跡対象はランキングや新着で目に付いたアプリが中心なので、無料アプリは人気上位に偏りやすく、この差には収集の偏りも含まれています。
偏りを差し引いても差が残るかは追跡データからは確かめられませんが、同じ母集団の中で無料アプリは100件未満が54.6%、有料アプリは95.1%と40ポイント以上開いており、偏りだけで説明するには大きな差だと筆者は見ています。
評価件数が多い有料アプリはMinecraft(106,009件)やPlague Inc. -伝染病株式会社-(53,693件)のような有名タイトルですが特殊なケースです。初めての有料アプリで評価が数件しか付かなくても普通です。
評価件数の分布と評価点の読み方はApp Storeのアプリは評価が何件付くのかで解説しています。
日本語だけで出す有料アプリは6.2%、iPad非対応は2割
追跡している有料アプリのうち、日本語だけに対応しているアプリは6.2%です。英語に対応しているアプリは92.6%で、無料アプリの80.7%より高くなっています。
対応言語と評価の関係は、評価点と評価件数で分けて見る必要があります。評価点については、評価が100件以上あるアプリ(有料・無料を含む)の中央値が1言語(4,649本)で4.37、2言語(2,268本)で4.35、3言語(1,083本)で4.43、4言語(4,659本)で4.46と差が0.1程度で、関係は見られませんでした。
評価件数については偏りがあります。評価が100件以上あるアプリでは1言語のみが36.7%、4言語(日本語・英語・中国語・韓国語)すべて対応が36.8%で、対応言語を判定できた追跡中の全アプリ(有料・無料を含む。1言語のみには英語のみも含む)での54.2%・22.5%と比べて、多言語対応のアプリの比率が大きく上がります。
多言語に対応したから評価が集まったのか、評価が集まる規模のアプリほど多言語対応まで手が回るのかは、追跡データからは区別できませんが可能であれば対応すべきです。
日本語だけでも成立する有料アプリはあります。Real英会話(1,300円)は日本語のみで評価12,338件を集めています。日本語話者に限定されるアプリなら、無理に英語を付ける必要はありません。
iPadについては、有料アプリの対応率は80.1%で、無料アプリの68.7%より高くなっています。ジャンル別の値は有料・無料を含む追跡中の全アプリでの集計で、ゲーム86.4%、ミュージック86.2%、教育85.6%が高く、ヘルスケア/フィットネスは50.4%です。
有料だけのジャンル別対応率は集計していませんが、ゲーム・ミュージック・教育の有料アプリでiPad非対応は少数派とみられます。Apple Watch対応は追跡中の全アプリで5.7%(有料アプリだけの値は集計していません)と少なく、ジャンル別でも天気の24.9%とヘルスケア/フィットネスの22.7%以外はすべて1割未満です。対応率の集計はiPad対応は74%、Apple Watch対応は6%で扱っています。
有料のままの値下げは1週間強・半額・元の価格に戻す
有料アプリを出したあとの値下げは、App Storeの値下げは何日で終わるのかで集計した2,660件を取り上げると、無料化は889件で、有料のまま価格を下げた値下げは1,771件です。
有料のままの値下げ1,771件では、続いた日数の中央値が8日、下げ幅の中央値が50%で、終了後に85.9%が値下げ前と同じ価格に戻しています。
無料化889件では76.8%ですが、この集計は期間内に終わった値下げだけを数えているため、長期の値下げは含まれておらず、日数は短めに出ています。後述の「1週間強」は下限寄りの目安です。
無料化889件は中央値3日と短く、76.8%が元の価格に戻っていることから、恒久的な無料化ではなく無料ランキングや当サイトのような媒体での露出を狙う施策とみられます。有料アプリを値下げするなら、期間は1週間強で幅は半額を目安として、終わったら元の価格に戻す、というのがデータから読める「型」でした。
価格を決めるときに見るもの
初めての有料アプリの価格は、自分のジャンルの中央値を起点に、150円・300円・500円・800円のどれかを選ぶのが出発点になります。あとから有料のまま値下げするなら1週間強、半額を目安にして終わったら元に戻すと無難です。
自身がリリースする有料アプリと同じジャンルで上位かつ同価格帯のものを見つけ、アノアプリで価格推移を追うと真似できる戦略が見つかるかもしれません。
調査方法
アノアプリが追跡しているのは、App Storeのランキングや新着で見つけたアプリを中心に、独自の基準で収集したアプリです。App Store上のすべてのアプリを網羅しているわけではありません。
価格・評価・対応言語・対応デバイスは2026年9月16日時点の値で、追跡中の49,045本(うち有料23,548本)を対象にしています。本記事の割合はすべてこの母集団での値で、ランキングや新着で目に付いたアプリが中心である分、App Store全体の値とは異なります。
値下げの日数と幅は2026年5月28日から9月16日までに始まって終わった値下げ2,660件の集計です。ジャンルはApp Storeの主ジャンルです。
アノアプリが独自に収集したデータをもとにした分析記事です。
